『河童のクゥと夏休み』がキネ旬ベストテン入り
映画雑誌『キネマ旬報』は、2007年度第81回キネマ旬報ベスト・テンを発表した。日本映画の第1位は、周防正行監督の『それでもボクはやってない』が選出された。また、第5位にはアニメ作品の『河童のクゥと夏休み』(原恵一監督)が入選。アニメ作品のキネ旬ベストテン(日本映画)入りは、2001年度の『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)以来6年ぶりで、通算11作品目。スタジオジブリ作品(『風の谷のナウシカ』含む)以外では、初の快挙となった。
・キネ旬ベストテン入りしたアニメ作品
1984年 | 『風の谷のナウシカ』 | 宮崎駿 | 第7位 |
1986年 | 『天空の城ラピュタ』 | 宮崎駿 | 第8位 |
1988年 | 『となりのトトロ』 | 宮崎駿 | 第1位 |
1988年 | 『火垂るの墓』 | 高畑勲 | 第6位 |
1989年 | 『魔女の宅急便』 | 宮崎駿 | 第5位 |
1991年 | 『おもひでぽろぽろ』 | 高畑勲 | 第9位 |
1992年 | 『紅の豚』 | 宮崎駿 | 第4位 |
1994年 | 『平成狸合戦ぽんぽこ』 | 高畑勲 | 第8位 |
1997年 | 『もののけ姫』 | 宮崎駿 | 第2位 |
2001年 | 『千と千尋の神隠し』 | 宮崎駿 | 第3位 |
2007年 | 『河童のクゥと夏休み』 | 原恵一 | 第5位 |
文化庁メディア芸術祭、『Wii Sports』『河童のクゥと夏休み』などが大賞に
『Wii Sports』は任天堂の最新ゲーム機「Wii」のゲームソフトで、リモコンによる体感操作でスポーツを楽しめるのが特徴で、発売から約2ヶ月で国内セールス100万本を突破した人気作。『河童のクゥと夏休み』は、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』で話題を集めた原恵一監督の5年ぶりの最新作で、現代に蘇った河童と少年のひと夏の出来事を描いた感動作。人間の優しさや醜さの多面性を見事に描き出した点が評価された。原恵一監督は、前作の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』に続き2度目の大賞受賞で、2度の大賞受賞は宮崎駿監督以来2人目。『モリのアサガオ』は、ドラマ化もされた『きらきらひかる』で知られる郷田マモラさんの作品で、新人刑務官と死刑囚たちの姿を通して、死刑制度という重いテーマに真正面から向き合った力作。『Nijuman no borei(20万の亡霊)』は、フランスのクリエーター、ジャン・ガブリエル・ペリオさんの作品で、広島の原爆ドームの歴史を1000枚以上の写真で次々に映し出し、「核廃絶」を訴えかけるドキュメンタリー映像。
今回の受賞作品について、審査委員の水口哲也さん(ゲームクリエーター)は、「メッセージ性の強い作品と革新性を持っている作品が選ばれた」とコメント。受賞者を代表して、受賞発表会に登場した『河童のクゥ』の原恵一監督は「20年間あたため続けて来たこの作品で、このような賞をいただくことが出来て本当にうれしい。」と受賞の喜びを語った。
このほか、アニメーション部門の優秀賞に『電脳コイル』『カフカ 田舎医者』などが選ばれたほか、功労賞にはアニメ脚本家の辻真先さんが受賞した。
【アニメーション部門】
大 賞:河童のクゥと夏休み(原恵一)
優秀賞:電脳コイル(磯光雄)
優秀賞:うっかりペネロペ(高木淳(監督))
優秀賞:天元突破グレンラガン(今石洋之(監督))
優秀賞:カフカ 田舎医者(山村浩二)
奨励賞:ウシニチ(一瀬皓コ)
【マンガ部門】
大 賞:モリのアサガオ(郷田マモラ)
優秀賞:海街diary(吉田秋生)
優秀賞:竹光侍(松本大洋/永福一成(作))
優秀賞:プライド(一条ゆかり)
優秀賞:鈴木先生(武富健治)
奨励賞:天顕祭(白井弓子)
【アート部門】
大 賞:nijuman no borei(Jean-Gabriel PERIOT)
優秀賞:ビュー・ビュー・View(blue elephant)
優秀賞:Se Mi Sei Vicino(If you are close to me) (Sonia CILLARI)
優秀賞:Camera Lucida: Sonochemical Observator(Evelina DOMNITCH /Dmitry GELFAND)
優秀賞:ISSEY MIYAKE A-POC INSIDE. (佐藤雅彦+ユーフラテス)
奨励賞:Super Smile(Effie WU)
【エンターテイメント部門】
大 賞:Wii Sports(「Wii Sports」開発チーム代表太田敬三)
優秀賞:MONSTER HUNTER PORTABLE 2nd(「モンスターハンターポータブル 2nd」開発チーム代表辻本良三)
優秀賞:METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS(小島秀夫(KONAMI))
優秀賞:気づいていますか。(田中英生)
優秀賞:DAYDREAM(勅使河原一雅)
奨励賞:匂いをかがれるかぐや姫 ~日本昔話Remix~(原倫太郎+原游)
<参照記事>
「メディア芸術祭:「Wiiスポーツ」「河童とクゥ…」が大賞 マンガは死刑制度、アートは原爆テーマ」(まんたんウェブ)
「平成19年度(第11回)文化庁メディア芸術祭 受賞作品」(文化庁メディア芸術プラザ)
メディア芸術祭アニメ部門は混戦模様
<劇場長編映画>
『パプリカ』(今敏監督)
『鉄コン筋クリート』(マイケル・アリアス監督)
『河童のクゥと夏休み』(原恵一監督)
<劇場短編映画>
『カフカ 田舎医者』(山村浩二監督)
『秒速5センチメートル』(新海誠監督)
『Genius Party』(河森正治、湯浅政明、渡辺信一郎ら)
<TVアニメ>
『電脳コイル』(磯光雄監督)
『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』(岡村天斎監督)
劇場長編映画の『パプリカ』『鉄コン筋クリート』は昨年の公開だが、応募期間の都合上、今年度にまわっている可能性もある。いずれも海外での実績は十分。一方、『河童のクゥと夏休み』は、前作の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』で第6回のアニメーション部門大賞を受賞した原恵一監督の最新作。感動的なストーリーが話題を呼び、映画評論家・業界関係者からも高い評価を受けている。技術面では見劣りするが、演出・ストーリー面では他を圧倒している。今・原両監督は1度の大賞受賞を経験しており、大賞をとれば、宮崎駿監督に次いで二人目の大賞複数回受賞者となる。
短編映画では、『カフカ 田舎医者』が強力。オタワ国際アニメーション映画祭ではグランプリを獲得しており、賞争いには十分食い込めそう。山村浩二監督は、『頭山』で第6回で優秀賞を獲得しているが、大賞の受賞経験はなし。初の大賞受賞を狙う。
一方、新海誠監督の『秒速5センチメートル』。先日のアジア太平洋映画賞にて、同じくノミネートされていた『河童のクゥと夏休み』を抑えてアニメーション映画賞を受賞している。新海監督は2002年に『ほしのこえ』でメディア芸術祭の特別賞を受賞しているが、部門での大賞・優秀賞の受賞は未だにない。初の部門受賞を果たしたいところ。『Genius Party』は短編オムニバス映画。それぞれ各監督の個性が十分に発揮された傑作となっていて、侮れない存在。そのいずれかが食い込んできそうな予感。
劇場映画だけでもこれだけ充実しているのに加え、テレビアニメでも今年は秀作が目立つ。中でも『電脳コイル』は有力。『新世紀エヴァンゲリオン』などでアニメーターとして活躍した磯光雄原案のテレビアニメ。先日最終回を迎えた今作だが、日常世界と電脳世界が融和する舞台設定や巧みなストーリーなどが好評を得ている。マッドハウス制作というだけあり、技術力も高い。おそらく大賞の最有力候補ではなかろうか。ほか「Open Forum」で推薦を集めた『DARKER THAN BLACK ―黒の契約者―』も手ごわい存在だ。
あくまで商業作品に絞って候補作を挙げているが、これ以外にアマチュアからの応募も入るので、受賞作がどれになるのかはますます予想できない。それほど今年のアニメーション作品は、技術面・ストーリー面ともに優れた作品が多かったことのあらわれであり、これからのアニメーション業界に対する期待がますます膨らむ。状況次第では第5回(2001年)の『千と千尋の神隠し』『千年女優』以来の大賞同時受賞の可能性もある。大賞に輝くのは果たして?
発表は12月4日(火)15:00~の予定。乞うご期待。
映画評『河童のクゥと夏休み』
『クレヨンしんちゃん』シリーズの『オトナ帝国の逆襲』、『アッパレ!戦国大合戦』で、大人たちにも感動を与えた、原恵一監督の待望の最新作。『オトナ帝国』『戦国大合戦』で泣かされた身としては、早く原監督の最新作が見たいとずっと思っており、待ちに待ったという感じである。
原作は小暮正夫の児童文学。江戸時代の河童が現代に蘇り、そこで巻き起こる騒動を描いているが、そこから原監督自身がオリジナルの要素を加えて、大幅に脚色している。「日常」のなかに、「非日常」の河童が入り込むというあたり、原監督が好きだと言う藤子・F・不二雄作品に通じるところがある。それゆえか、随所に『ドラえもん』や『エスパー魔美』を彷彿とさせるエピソードや演出がちょろちょろ出てくるわけで・・・。(クゥに刺身を与えるあたりは『のび太の恐竜』だし、オッサンの過去なんて『ドロン葉』だし、マスコミが大騒ぎするところなんて『ウソ×ウソ=パニック』だよなあ・・・。他にもあるかも。)
しかし、そんな少し不思議な世界観もさることながら、原監督の凄いところは、「日常」を緻密に、丁寧に描いているところにある。これまでのアニメ映画であれば、ほぼ間違いなく描かれないであろう人物描写や何気ない行動までも、ここまでやるかと思うぐらい丁寧に描き、時にはそれをじっくりと見せる。アニメ映画でそれをやろうとしたら、退屈されるだろうと思われがちなのだが、しかし、この作品ではそんなことは一切感じない。むしろ飽きないくらいだ。若草恵氏の秀逸な音楽が効果的に使われ、まるで日本映画を観ているかのような錯覚に陥った。これこそ、原監督のやりたかった映画だったのだと感嘆させられる。最終的に3時間分の尺になってしまい、切らざるをえなくなってしまったのも頷ける。
もちろん、この作品の重要点は、オッサン、瞳、菊池紗代子という、三大脇キャラ(?)の思わぬ活躍ぶりにほかならない。彼らの姿に、ときには笑い、ときには涙し、ときには心を躍らせた人も多いだろう。さすがにここで改めて言う必要もなかろう。
とにかく、(ジブリじゃない)アニメ映画だからといって敬遠せず、とにかく観てほしい。
これはれっきとした「日本映画」である。
世界環境デーに、養老孟司氏と原恵一監督のトークショー&試写会を開催
養老氏は京都国際マンガミュージアムの初代館長を務めるなど、漫画に造詣が深い一方、昆虫採集を趣味としており、自然環境にまつわる著書も多数執筆している。一方の原恵一監督は、『エスパー魔美』などで自然描写の濃い作品を手がけたこともあり、また東南アジア旅行に半年以上行ったこともあるなど、ナチュラリストの面ものぞかせている。今回の『河童のクゥ』でも、遠野の自然を緻密に描いた作風に仕上がっており、「世界環境デー」の名にふさわしい、中身の濃いイベントになりそうだ。
特別試写会は6月5日(火)によみうりホールにて、350組700名を招待して行われる。試写会参加の応募は公式サイトより応募。締切は5月27日まで。
河童のクゥと夏休み公式サイト
![]() | バカの壁 養老 孟司 (2003/04/10) 新潮社 この商品の詳細を見る |
『コードギアス』V.V.の正体は河童だった!?
そのV.V.を演じたのは冨澤風斗。彼の詳しい経歴は不明だが、わかっているのは、子役俳優で、今年夏に公開される、原恵一監督(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』)の劇場最新作『河童のクゥと夏休み』で主役の河童、クゥを演じているということである。
V.V.の演技がどんなものだったのかは、私は未見なので何とも言えないが、河童のクゥについては、『河童のクゥと夏休み』公式サイトで配信されている予告編で見ることができる。
見たかぎりでは、そんなに演技は悪くないと個人的には思っているのだが、実のところはどうなんでしょうねえ・・・。
そんな酷評が上がったためか、原恵一監督ファンの中には、『河童のクゥ』への(興行面・作品面などへの)悪影響を気にする人も出てきているんだとか。
ところで、『コードギアス』と『河童のクゥ』だが、音響制作はどちらもオーディオ・プランニング・ユー(以下、APU)が手がけている。(『コードギアス』の音響監督、浦上靖夫・井澤基両氏と、『河童のクゥ』の大熊昭氏は、同じAPUの所属。)
あくまで推測の域を超えないが、このキャスティングにはAPUの意向が働いたとも考えられなくはない。
ちなみに、冨澤風斗という名前だが、『河童のクゥ』では冨沢風斗という表記になっている。おそらくどちらかが誤植なのだろうが、実は名前一字違いの別人だったら笑うな。
(さすがに、風斗という名前はめったにないから、んなことないか。)
BIGLOBEストリームでは、『コードギアス 反逆のルルーシュ』の最新話を毎週無料配信中。
テーマ:コードギアス 反逆のルルーシュ - ジャンル:アニメ・コミック