映画評『河童のクゥと夏休み』
『クレヨンしんちゃん』シリーズの『オトナ帝国の逆襲』、『アッパレ!戦国大合戦』で、大人たちにも感動を与えた、原恵一監督の待望の最新作。『オトナ帝国』『戦国大合戦』で泣かされた身としては、早く原監督の最新作が見たいとずっと思っており、待ちに待ったという感じである。
原作は小暮正夫の児童文学。江戸時代の河童が現代に蘇り、そこで巻き起こる騒動を描いているが、そこから原監督自身がオリジナルの要素を加えて、大幅に脚色している。「日常」のなかに、「非日常」の河童が入り込むというあたり、原監督が好きだと言う藤子・F・不二雄作品に通じるところがある。それゆえか、随所に『ドラえもん』や『エスパー魔美』を彷彿とさせるエピソードや演出がちょろちょろ出てくるわけで・・・。(クゥに刺身を与えるあたりは『のび太の恐竜』だし、オッサンの過去なんて『ドロン葉』だし、マスコミが大騒ぎするところなんて『ウソ×ウソ=パニック』だよなあ・・・。他にもあるかも。)
しかし、そんな少し不思議な世界観もさることながら、原監督の凄いところは、「日常」を緻密に、丁寧に描いているところにある。これまでのアニメ映画であれば、ほぼ間違いなく描かれないであろう人物描写や何気ない行動までも、ここまでやるかと思うぐらい丁寧に描き、時にはそれをじっくりと見せる。アニメ映画でそれをやろうとしたら、退屈されるだろうと思われがちなのだが、しかし、この作品ではそんなことは一切感じない。むしろ飽きないくらいだ。若草恵氏の秀逸な音楽が効果的に使われ、まるで日本映画を観ているかのような錯覚に陥った。これこそ、原監督のやりたかった映画だったのだと感嘆させられる。最終的に3時間分の尺になってしまい、切らざるをえなくなってしまったのも頷ける。
もちろん、この作品の重要点は、オッサン、瞳、菊池紗代子という、三大脇キャラ(?)の思わぬ活躍ぶりにほかならない。彼らの姿に、ときには笑い、ときには涙し、ときには心を躍らせた人も多いだろう。さすがにここで改めて言う必要もなかろう。
とにかく、(ジブリじゃない)アニメ映画だからといって敬遠せず、とにかく観てほしい。
これはれっきとした「日本映画」である。
<あらすじ>
夏休み前のある日、康一が学校帰りに拾った石を洗っていると、中から河童の子どもが現れた。第一声から「クゥ」と名づけられた河童は人間と同じ言葉を話し、初めは驚いた家族もクゥのことを受け入れ、クゥと康一は仲良しになる。やがてクゥが仲間の元に帰ると言い出し、康一はクゥを連れて河童伝説の残る遠野へ旅に出る。(Yahoo!ムービーより)
<スタッフ>
監督・脚本:原恵一(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』)
原作:小暮正夫
音楽:若草恵(『クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!』)
キャラクターデザイン・作画監督:末吉裕一郎(『MIND GAME』)
主題歌:大山百合香「夏のしずく」
アニメーション制作:シンエイ動画(『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』)
<キャスト>
クゥ:冨澤風斗
上原康一:横川貴大
上原保雄:田中直樹(ココリコ)(『アルゼンチンババア』『逆境ナイン』)
上原友佳里:西田尚美(『ハチミツとクローバー』『Little DJ~小さな恋の物語』)
上原瞳:松元環季(『ドラえもん のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~』)
菊池紗代子:植松夏希
オッサン:安原義人(『宇宙戦艦ヤマト』『天空の城ラピュタ』)
クゥの父親:なぎら健壱(『釣りバカ日誌10』)
キジムナー:ゴリ(ガレッジセール)(『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』)
<関連作品>
![]() | 河童のクゥと夏休み 絵コンテ集 原恵一 (2007/07/27) バジリコ この商品の詳細を見る |
![]() | アニメーション監督 原恵一 浜野 保樹 (2005/07) 晶文社 この商品の詳細を見る |
![]() | 映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 矢島晶子、ならはしみき 他 (2002/11/25) バンダイビジュアル この商品の詳細を見る |
トラックバック
http://amateurjournal.blog95.fc2.com/tb.php/128-b2a1dfac
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)