映画評『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(ネタバレあり注意)
まず圧巻は、冒頭のオープニング。
まさか夕日町にゴジラを登場させるとは・・・。ゴジラに踏み荒らされる昭和30年代の東京。それをVFXの技術力でものの見事に再現させてしまった。
そう来るか、山崎貴!!
ゴジラそのものの姿には、少し違和感を覚えたが、
よく言えばGJ。悪く言えば反則かも。
今作の映画においては、一つのテーマがあるように思う。
それは「夢(あるいは願望、理想)と現実」。淳之介を連れ戻そうとする川渕は、これからの日本の変化を案じて、茶川にお金よりも大切なものの存在を否定する。一方のヒロミは、借金を返して再び茶川たちと過ごせることを夢見て、踊り子に勤しむが、踊り子仲間の梅子からは、作家とは住む世界が違うと言い放ち、現実の厳しさを教える。やがて茶川は、給食を我慢する淳之介を見かねて、芥川賞を狙うべく新作を執筆するが、ヒロミは夢を捨て大阪へ嫁ごうとする・・・
結局はハッピーエンドという、ベタすぎる展開が待っているが、そうしたテーマは現代の日本の姿への問いかけにも思えてくる。『オトナ帝国の逆襲』で、ケンは「昔、外がこの町と同じ姿だった頃、人々は夢や希望に溢れていた。21世紀があんなに輝いていたのに。今の日本に溢れているのは汚い金と燃えないゴミくらいだ」と語っていたが、それを体現してしまった格好だ。山崎監督は、それほど『オトナ帝国』を意識していたのだろうか・・・?
「お金よりも大切なもの」「夢」。それを昔の東京を舞台に描くこと自体、過去を美化しているのではないかという批判もある。その指摘を否定するつもりはないが、拝金主義に犯されつつある現代もまた誉められるべきではない。視聴率のために真摯な番組作りを怠り、捏造に走るテレビ局。客を入れたいがために、これまで愛されたキャラクター像を失わせてまで声優を替えさせる映画会社。消費者の安全を二の次にしてしまうメーカー・・・・・・
人々が「昭和ノスタルジー」に走ってしまうのも無理はない気がする。もっともこの映画自体も、そういう商業面をのぞかせていることは実に皮肉なのだが。
さすがに前作が良すぎたせいというのもあるが、今作は少しパワー不足の感も否めない。ただ、前作を観ていれば楽しめるシーンやネタもあり、観ておいて損はない。欲を言えば、新キャラクターの鈴木美加と一平ら子供たちの絡みがもう少し欲しかったところ。さすがに最後のアレはベタすぎるし、ちょっと深みが足りない。
<スタッフ>
監督・脚本・VFX:山崎貴(『ALWAYS 三丁目の夕日』)
原作:西岸良平
脚本:古沢良太(『キサラギ』)
音楽:佐藤直紀(『ストレンヂア -無皇刃譚-』『手紙』)
<キャスト>
茶川竜之介:吉岡秀隆(『博士の愛した数式』『四日間の奇蹟』)
石崎ヒロミ:小雪(『ゲゲゲの鬼太郎』『スパイ・ゾルゲ』)
鈴木則文:堤真一(『舞妓 Haaaan!!!』『地下鉄(メトロ)に乗って』)
鈴木トモエ:薬師丸ひろ子(『めがね』『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』)
古行淳之介:須賀健太(『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』)
鈴木一平:小清水一揮(『ALWAYS 三丁目の夕日』)
星野六子:堀北真希(『アルゼンチンババア』『恋する日曜日 私。恋した』)
大田キン:もたいまさこ(『それでもボクはやってない』『めがね』)
宅間史郎:三浦友和(『遠くの空に消えた』『陰日向に咲く』)
川渕康成:小日向文世(『そのときは彼によろしく』『HERO』)
中山武雄:浅利陽介(『いま、会いにゆきます』)
<関連作品>
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