『オトナ帝国』『戦国大合戦』の原点。原監督デビュー作
藤子・F・不二雄原作の『エスパー魔美』の劇場版としてよく知られている作品だが、同時に『クレヨンしんちゃん』シリーズの原恵一監督の映画デビュー作でもあり、のちの『オトナ帝国』『戦国大合戦』への礎となった作品と言っていい。ストーリーは、原作の「人形が泣いた?」を基にしており、展開こそは原作どおりとなっているものの、人形劇団を率いるのがおじいさんから若い男女に差し替えられ、その上、オリジナルストーリーとして彼らの物語を組み込み、原作のプロットの良さと原監督の作家性が見事に融合した傑作となっている。
細かく見ていくと、随所に『オトナ帝国』や『戦国大合戦』の面影を見ることができる。この作品において、魔美は主人公にあらず、むしろ劇団の英樹と朋子の引き立て役に徹している。この立ち位置は、まさしく『戦国大合戦』でのしんのすけのそれであり、英樹と朋子は又兵衛と廉を彷彿とさせるものだった。そして、英樹が人形劇に目覚めるきっかけとなった、浄瑠璃の回顧シーンは、『オトナ帝国』のひろしの回顧シーンとどことなく重なって見えてくる。「処女作には監督の作家性がすべて込められている」という話はよく聞くが、この作品は紛れもなく、原恵一監督の処女作である。
他にも、原監督の敬愛する日本映画を意識した演出(例えば、東京駅にて列車が発つ一連のシーン)やストーリーも描かれていて、アニメであっても「日本映画」を描いていこうという原監督の姿勢そのものが見えてくる。もっとも、子供向けのアニメ映画にしてはあまりにも大人びていて、子供でも楽しめる作品かいうと、さすがに厳しいものがある。そういうところは、さすがに『オトナ帝国』や『戦国大合戦』のほうに軍配が上がる。
だが、大人が見るのであれば、これは原作を知らない人でも十分楽しめる内容である。藤子ファンのみならずクレしん映画ファンにもぜひ一見をおすすめしたい。(もっとも、現時点では未だDVD化されておらず、レンタルVHSがなんとかリリースされている状況なので、近所のレンタルビデオ店で探して見つけてほしい。置いてあるかどうかは運次第だが。)
~作品データ~
<解説>
藤子・F・不二雄原作の人気マンガの短編映画化。超能力少女・魔美が解散寸前の人形劇団を助けるまでの活躍を描く。監督は『クレヨンしんちゃん』シリーズの原恵一。
<あらすじ>
魔美は人形劇団こけし座と知り合い、次第に人形劇に魅了されていくが、経営難のために団員が次々とやめていく。そして、とうとう団長の英樹までもが故郷に帰ってしまう。なんとか解散を止めたい魔美が起こした行動は・・・
<スタッフ>
監督:原恵一(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』)
原作:藤子・F・不二雄(『ドラえもん』映画シリーズ)
脚本:富田祐弘(『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』)
音楽:田中公平(『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』)
<キャスト>
魔美:横沢啓子(現:よこざわけい子)(『天空の城ラピュタ』『ドラえもん のび太の魔界大冒険』)
高畑:柴本広之(現:柴本浩行)(『機動戦士ZガンダムIII 星の鼓動は愛』)
コンポコ:小粥よう子(現:日比野朱里)(『キャプテン翼』)
パパ:増岡弘(『クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦』)
ママ:榊原良子(『立喰師列伝』『機動戦士ZガンダムIII 星の鼓動は愛』)
英樹:大塚芳忠(『真救世主伝説 北斗の拳』)
朋子:荘真由美(『ドラえもん のび太の宇宙漂流記』)
めぐみ:小山茉美(『千年女優』『APPLE SEED』)
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