あの人気マンガも「封印」されていた・・・

産経新聞の元記者である安藤健二氏が、ある事情で「封印」されてしまった漫画・アニメ・特撮作品を取り上げ、周辺関係者への徹底的な取材や資料を基に、封印の真相を探るルポルタージュである。
本著はシリーズの第2弾にあたり、前作は「ウルトラマン第12話」や「ブラックジャック41話」などシリーズのうち欠番となったものを取り上げていたが、今回はシリーズそのものが「封印」されている作品を取り上げている。
取り上げられたのは、『キャンディ・キャンディ』『ジャングル黒べえ』『オバケのQ太郎』『サンダーマスク』の4本。特に『キャンディ・キャンディ』と『オバケのQ太郎』なら、マンガやアニメにそれほど詳しくない人でも、知っているという人は多いだろう。それぐらい人気もあり、知名度のある作品すらも、「封印」されているという事実に驚かされた人も少なくないだろう。その「封印」の真相を、安藤氏は緻密な取材で真相を明らかにしていこうとするが、その内容はあまりにも作品とはかけ離れた現実だ。
原作者と漫画家との軋轢、「黒人差別」運動の台頭による業界の萎縮、あいまいな著作権処理の問題・・・著者の推測も含まれているとはいえ、それらが「封印」の理由なのだそうだが、いずれも読んでいて気分が悪くなる裏事情だ。特に、第1章の『キャンディ・キャンディ』の著作権を巡る裁判劇には、その中身もそうなのだが、なによりも仲の良かった原作者と漫画家が、もはや絶望的と言ってもいいほど、修復不可能な敵対関係になってしまったのには、私は言葉も出ない。「読者のために」などといって「封印」を解くというのは、あまりにも軽々しいことではないかとさえ思った。その一方で、『オバケのQ太郎』や『ジャングル黒べえ』については、近い関係者が真実をなかなか語ろうとしないことに、苛立ちも覚えた。
当事者たちと同様、読者の私たちも感情的になってしまうほど、本書はそんな人間の奥底にある負の感情を浮き彫りにする。不謹慎かもしれないが、かなり惹き込まれる内容でとても面白く読める。(決して人の不幸や、作品の「封印」を笑いたいわけではなく。)260ページの著書を読むのに、普段は2週間以上も費やすのに、これに限っては3日で読破してしまった。
やはり、裏事情を知りたいという、ごく自然な読者感情がそうさせてしまうのか。
とにかく、これほど「封印」の真実に迫ったルポルタージュは過去にもなかったように思う。裏事情を知るのが好きな読者、ファンには一読の価値があるだろう。「夢」を壊されたくない方は、あまり手を出さない方が得策だろう。
~書籍データ~
<概要>
「失われた物語」は、まだ存在する。あらゆる“名作”が発掘・復刻され尽くされつつあるなか、それでもいまだ目にすることができない一部の作品たち。長大なシリーズとして多くの人々の記憶に残りながら、その一部だけでなく、シリーズ全体がなかったことにされている物語。ほんの数年前まで再放送されながら、今ではフィルムが存在するかどうかすら確認できない物語。そして、国民的知名度を誇りながら、誰も知らないあいだに消されていた物語。彼らは、なぜ「封印」されたのか…?戦後の特撮、マンガ、アニメを中心に関係者の証言を徹底的に集め、その“謎”に迫る。大反響を呼んだ新世代ルポルタージュ、待望の第2弾。(amazonレビューより)
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