映画評『バッテリー』
累計1000万部数以上の人気小説の映画化であるが、筆者は名前しか聞いたことがなく、原作小説は未読だった。それでも、劇場に足を運んだのは、自分自身野球ファンであり、ファンなら観といたほうがいいかと思ったからである。
「野球」を題材にした映画やマンガといったら、とかく9人全員が団結するというテーマを描きがちなのだが、この映画はタイトルどおり、「バッテリー」に重点を置いたストーリーになっている。
主人公の原田巧はまさしく孤高のエース投手である。いわばオレ様的性格で、多少ひねくれたところもあるが、それは母が病弱の弟、青波ばかりに構い、野球には理解を示してくれなかったがゆえに、愛情を受けられずに育ってしまったためというのが一因だろう。それに加えて、力があり過ぎたがゆえに、小学校の大会での苦い思い出が、彼を一層苦しめる。単なるオレ様キャラなら、嫌悪感を覚えるのだろうが、そうなってしまったいきさつを端的に描いており、そんなに嫌悪感を覚えず、むしろ同情すら覚える。それに、そんな彼も弟の青波のことは気にかけている様子で、人間味のある部分も覗かせる。
その彼に友好的に接し、バッテリーを組むのが永倉豪。巧の球を出会ってすぐに受けられるほどの実力のある捕手。豪と巧のバッテリーを重点に置きストーリーは展開していく。上級生との対峙、巧の成長に追いつかない豪とそのことに苛立つ巧の対立、そして裏切り。ライバルから受けた屈辱、弟の入院・・・その一つ一つに切なさを覚え、ホロリとさせられる。そういった壁を乗り越えて、技術的にも人間的にも成長していく巧たちの姿には、爽快感をも覚える。
この話の続きとして、大会で巧たちが活躍する場面を見てみたい、そう感じさせた映画だった。
<解説>
累計800万部を超える驚異的な売上げを記録している、あさのあつこの同名原作を、『陰陽師』シリーズの滝田洋二郎監督が実写ドラマ化。野球に青春を捧げる少年たちを主人公に、その家族、兄弟、クラスメイトとのきずなをみずみずしいタッチで映し出す。天海祐希、岸谷五朗、菅原文太ら実力派俳優陣と、オーディションで選ばれた若手とのコラボレーションが実現した。舞台となった風光明媚な岡山の大自然も見逃せない。(シネマトゥデイより)
<あらすじ>
野球にすべてを賭け、自分のピッチャーとしての才能に絶対の自信を持っている原田巧は、中学入学を控えた春休みに岡山県境の地方都市に引越す。引越し早々、巧はキャッチャーの永倉豪と出会い、バッテリーを組むことを熱望されるが、二人が入部した新田東中学の野球部は、監督に徹底的に管理されていた。(シネマトゥデイより)
<スタッフ>
監督:滝田洋二郎(『陰陽師』『阿修羅城の瞳』)
原作:あさのあつこ
脚本:森下直(『13階段』)
音楽:吉俣良(『シュガー&スパイス~風味絶佳~』)
主題歌:熊木杏里「春の風」
<キャスト>
原田巧:林遣都
永倉豪:山田健太
原田青波:鎗田晟裕
矢島繭:蓮佛美沙子(『転校生(2007年版)』)
原田真紀子:天海祐希(『いぬのえいが』『千年の恋 ひかる源氏物語』)
原田広:岸谷五朗(『龍が如く 劇場版』『タイヨウのうた』)
井岡洋三:菅原文太(『トラック野郎』シリーズ、『わたしのグランパ』)
戸村真:萩原聖人(『アキハバラ@DEEP』『力道山』)
小野薫子:上原美佐(『ただ、君を愛してる』『呪怨』)
永倉節子:濱田マリ(『アンフェア the movie』『血と骨』)
<関連作品>


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